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地方公務員拾遺物語 【第177号】
   〜優先順位【雪の朝編】〜
                    2006/2/12

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■もくじ■
【1】優先順位【雪の朝編】

【2】解説

【3】編集後記

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【1】優先順位【雪の朝編】

雪の少ないある地方。
数年ぶりの大雪に、朝の交通は麻痺した・・・

いち早く出勤した、役所の土木担当課。
まずは、在庫の融雪剤(凍結防止剤)を確認し、地元業者から在庫をかき集めた。
そして、散布班を編成し、行先を分担している時のこと。
1本の電話が・・・

電話 「〇〇在住の××です。今、大雪で家の前の道路に車を出せません。なんとかしてください」
職員A 「・・・だそうです」
職員B 「って、〇〇地区は、基本的に平地だろ。急勾配や凍結橋梁を中心に対処するから、後回し!」
職員A 「(電話に向かって)申し訳ありません。危険地域や交通量を判断して対処しますので、優先順位のご理解を願います」

1時間後、散布班が、融雪剤の補給に帰ってきた頃・・・

××氏 「まだですか!?家から一歩も出られないじゃないですか!!」
職員A 「(電話に向かって)危険地区優先で、対処中です。ご理解ください」
職員B 「おい、山の上の△△地区と、□□地区がまだ、孤立している。とっとと、次、行くぞ!!」
職員A 「はいっ!!」

その直後、職員A氏とB氏が、孤立地区へ向かう途中のこと。
〇〇地区を通りがかった・・・

職員A 「あれ?今、××氏のお宅がありました」
職員B 「んで?」
職員A 「融雪が完了して、車の通れる道路から、10mも離れてませんでした」
職員B 「××氏って、健常者だよな・・・」
職員A 「確か・・・」
職員B 「・・・車運転するとか言ってたよな。自分で除雪できるだろ。放っとこう」
職員A 「・・・はい」

またまた一時間後、散布班が、融雪剤の補給に帰ってきた頃・・・

××氏 「一体、いつまで、待たせるつもりですか!?早く除雪に来てくださいっ!!」
職員A 「えー・・・」
××氏 「優先順位が、どーのこーのって、言うんでしょう!!」
職員A 「はい。あと、可能な範囲で、地域の自助努力にご協力をお願いするものであります」
××氏 「あのね・・・(怒)」
職員A 「(電話に半分、手で覆いをして)え?※※地区が、まだ孤立しているって?はい。すぐ出ます」
××氏 「・・・」

結局、××氏の家の前を除雪したのは、××氏でも役所でもなく、午後の太陽だった・・・

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【2】解説

雪国ではなく南国でもない。
そんな中途半端な地域が、数十年来の大雪に見舞われた時の話。

役所の戦力は有限。
そして、自然の猛威にはあまりに微力。

みんなが困っている時は、助け合うのが基本。
まず、何が合理的で手っ取り早い方法なのかを考えましょう。
また、こういった時、個人の社会的意識が問われます。

危機管理には、優先順位があります。
そして、役所にしかできない仕事を率先して遂行するのも、役所の存在意義のひとつです。

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【3】編集後記

時に、役所はドライに・冷徹になることが求められます。

10人を助けるのと同じ努力で20人助けられるなら、先に後者を助ける。
「自分でなんとかできる人」と「自分でどうにもできない人」なら、後者を先に助ける。
(↑今回のネタですね)
「困っている人」と「死にそうな人」なら、後者を先に助ける。
究極は、1人を見殺しにして、3人の命を救えるのなら、1人を見殺しにする。

それが、役所の仕事です。



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